キャプテンが一人で抱え込んでいませんか
練習後、キャプテンが一人でグラウンド整備をしている姿を見たことはありませんか。「自分がやらなきゃ」と思い込んで、声を出すのも、後輩の面倒を見るのも、すべて一人で背負ってしまう。そんなキャプテンの姿は、一見頼もしく見えるかもしれません。しかし、その裏で「他のメンバーが育たない」「キャプテンが潰れてしまう」という問題が起きていることも少なくありません。
この記事では、キャプテン一人に頼らず、チーム全員がリーダーシップを発揮する「シェアド・リーダーシップ」という考え方と、明日から試せる具体的な方法をお伝えします。
リーダーシップは一人のものではない
従来のリーダーシップ研究では、監督やキャプテンといった「一人の強いリーダー」に焦点が当てられてきました。しかし最近の研究では、「複数のチームメンバーにリーダーシップの役割と影響力が分散されているチーム状態」を指す「シェアド・リーダーシップ」という考え方が注目されています。
これは、キャプテンだけでなく、副キャプテンも、2年生も、控えの選手も、それぞれが自分の役割の中でリーダーシップを発揮する状態を指します。例えば、声出しが得意な選手、後輩の面倒見がいい選手、データ分析が好きな選手、それぞれが自分の強みを活かしてチームに貢献する。そんな関係性の中で、チーム全体が前に進んでいくのです。
日本体育・スポーツ・健康学会の研究によれば、「チーム内のリーダーシップ構造をネットワークとして分析することで、非公式なリーダーの存在やメンバーの関係性を明らかにすることができる」とされています。つまり、キャプテンという肩書きがなくても、チームに影響を与えている選手は必ず存在するということです。
なぜ一人のリーダーに頼ると問題が起きるのか
キャプテン一人に頼る体制には、いくつかのリスクがあります。
まず、キャプテン自身が疲弊してしまうこと。すべての責任を背負い込むと、プレーに集中できなくなったり、精神的に追い込まれたりします。次に、他のメンバーが「キャプテンがやってくれる」と受け身になってしまうこと。これでは、チーム全体の成長が止まってしまいます。
さらに、キャプテンが卒業した後、チームが一気に弱体化するという問題もあります。「あの代は強かったけど、今の代は…」と言われるチームは、一人のリーダーに依存しすぎていた可能性があります。
チーム全員でリーダーシップを育てる方法
では、どうすればチーム全員がリーダーシップを発揮できるようになるのでしょうか。明日から試せる具体的な方法を3つ紹介します。
役割を細かく分ける
まず、チーム運営に必要な役割を細かく分けて、一人ひとりに任せてみましょう。例えば、「声出し係」「グラウンド整備係」「道具管理係」「データ記録係」「後輩指導係」など。キャプテンがすべてをやるのではなく、それぞれの役割に責任者を置くのです。
大事なのは、「補欠の選手にも役割を与える」こと。試合に出られなくても、チームに貢献できる場所があると感じられれば、モチベーションは変わります。
対話の場を定期的に作る
週に一度、10分でもいいので、チーム全員で話す時間を作ってみてください。「今週の練習で気づいたこと」「来週の目標」など、テーマは何でも構いません。
このとき大事なのは、キャプテンだけが話すのではなく、全員が一言ずつでも発言すること。最初は恥ずかしがる選手もいるかもしれませんが、続けていくうちに「自分の意見を言っていいんだ」という空気が生まれます。
スポーツ心理学の研究では、「部下との信頼関係を構築し、寄り添いながら情報を共有し、オープンな関係性の中に、責任と実行力を持って組織を成長させる方法」が現代のリーダーシップとして主流になりつつあるとされています。監督が一方的に指示を出すのではなく、選手同士が対話する場を作ることが、チーム全体のリーダーシップを育てる第一歩です。
非公式なリーダーを見つけて認める
肩書きはなくても、チームに影響を与えている選手は必ずいます。例えば、練習後に後輩の相談に乗っている選手、ムードメーカーとして場を和ませている選手、黙々と練習する姿で周りを引っ張っている選手。
そういった選手を見つけたら、監督から「お前の存在がチームを支えているぞ」と一言伝えてみてください。認められることで、その選手はさらに自信を持って動けるようになります。
研究では、「非公式なリーダーの存在を考慮に入れた研究を発展させることが求められる」とされています。つまり、肩書きのない選手の影響力を見逃さないことが、チーム全体の力を引き出すカギになるのです。
明日から一つだけ試してみる
シェアド・リーダーシップは、一朝一夕で作れるものではありません。でも、小さな一歩から始めることはできます。
例えば、明日の練習後に「今日の練習で気づいたことを一人ずつ言ってみよう」と声をかけてみる。それだけでも、チームの空気は少しずつ変わっていきます。
キャプテン一人に頼るのではなく、チーム全員がリーダーシップを発揮する。そんなチームを作ることができれば、選手一人ひとりの成長はもちろん、チーム全体の実力も確実に上がっていくはずです。